シルクロード絵描き旅

中央アジア・シルクロード。ひとりの絵描きの放浪記。

8/24 ウルムチからアルタイへの移動

 

 

 

※今回の記事は、私の危機管理の甘さが露呈しており、

人によっては気分を害されるかもしれない内容となっています。

それでも、私はあくまで『旅を物語のように』書きたいうえで、これは今後のエピソードに繋げていくために必要な出来事と思ったため、当時の私の気持ちのまま書かせて頂いております。

 

 

 

 

 

 

 

25日の丑三つ時、アルタイのホテルにてそれは起こりました -

 

 

 

夜半過ぎ、ハッと目が覚めて起き上がると、彼は今まさに私の足元の布団をめくり長ズボンの裾に手をかけていたところでした。

 

私はただ無言で彼をギッと睨みました。少しの間沈黙が空間を流れました。

最初に私が口を開きました。

『为什么(どうして)。』

 

すると彼はスマホ翻訳機で『我喜欢你(あなたが好きです)。』と打ってきたのです。

私は横にあった空のペットボトルを投げつけました。

 

『我反思。我现在离开这个房间。(すまなかった。ぼくは今この部屋を出ていく。)』と彼は言いました。

 

『今すぐ出てって。』

私は自分の算段の甘さをひどく後悔しました。

 

 

 

 

***

 

 

 

日は8月24日の朝に戻ります。

 

西寧から一晩で新疆ウイグル自治区省都ウルムチに到着しました。

北京時間では朝の8時半ですが、2時間ほど時差の遅いウイグル自治区では日はまだ淡く柔らかいです。

一晩寝台列車で過ごしましたが思いのほか身体は元気です。今夜はここウルムチで一泊して翌日に北のアルタイとカナス湖に向かう予定だったのですが、このままアルタイへ行けると判断しました。アルタイ方面の情報はまだ調べていませんが、私にはオフラインの地図アプリがあります。地図上には宿やレストラン、バス停などの旅情報が表示されます。アルタイは小さな田舎町だから歩いて宿探しが出来る、宿が見つかればWiFiで調べものが出来る。

 

 

ウルムチ南駅を出てすぐにあるタクシー停留所で『去哪里(どこ行くの)?』呼びかけてきたドライバーに、

『今日このままアルタイに行きたいんだけど』

『それは碾子溝バスターミナルだな、オッケー、乗りなよ。』

ドライバーとはスムーズに話が進みます。更に私の話し方から

『君どっから来たの、え、日本人?君中国語話せるのかい!』と気のいい様子。

ああ、すんなり移動出来そうです。やっぱり中国語会話が少しでも出来るとずいぶんと楽です。現地の人とコミュニケーションが取れればその分味方が増えるってもんです。

 

 

 

中国の車は日本と違い左ハンドルです。そのことを一瞬忘れ、私は助手席に乗っていた男性の乗客をドライバーと勘違いし、アルタイ行のバスチケットはすぐ買えるものだろうかと話しかけてしまいます。中国のチケット売り場は鉄道駅を主に行列になる事も多く、ウルムチのバス駅事情やアルタイへの所要時間のわからない私には、今日中の移動が可能かどうかを少しでも知っておきたかったのです。

彼はドライバーでなく乗客だとすぐに気づいた私は、地元ウルムチ市民ではなさそうな彼には分からないだろうと舌を噛みましたが、思いのほか彼は私の質問に丁寧に答えてくれました。そして彼は運転手に、私と同じ行き先を告げました。運転手は『えっ、君たち二人でアルタイに行くのかい?』と訊いたと思います、彼は『違うよ。』と答えました。

 

彼は上下黒色の服を着た強面の青年でした。同年代と思われます。なまりの強い中国語でしたが話し方は穏やかなので、その多くがきつい口調の中国人の中ではかなり話しやすく感じられました。

 

 

 

しかし…。

チケット売り場まで着いていくよと言ったはずの彼は、自身もアルタイ行のバスチケットを購入したのです。

 

 

 

あれ?

 

 

 

確かに私のほうから彼に話しかけ、自己紹介もしましたが、アルタイ行のバスについてが目的だっただけです。

しかし彼は何を勘違いしたか、私たちがすっかり友達になったと思い込んでいる様子です。

彼の持ち物はこれまた黒い手提げ袋ひとつ。元々アルタイに行くわけではなかったでしょう。

 

同年代の彼は新疆ウイグル自治区のアクスという都市から来たそう。

勝気な性格でもなく、その振る舞いぶりからはあまり人擦れしておらずいわゆる『悪い人』という感じではなさそうでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バス待ちの間、彼は今日一緒のホテルに泊まっていいかと訊いて来ました。

ああ…。

嫌です。と言うとすぐさま『どうして』、と言います。どうしてと言われても。

 

彼への違和感は膨らんでいきましたが、その違和感はまだ決定的なものではなく、彼の振る舞いはまだ柔らかかったので、私は様子を伺っていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

面倒なことになりました…。

席番号も隣同士だったため、バスが発車してから彼の質問は止まりません。

同じ部屋が無理なら違う部屋に泊まってもいいか、僕が日本に行ったら君を訪ねてもいいか、日本語を覚えたいので教えてくれまいか …。

…いちいち疑問形で話しかけてくることにもうんざりしていました。

 

 

 

 

彼のスマホの電池はもう赤色、数パーセントしか残っていません、そのスマホで『日本人女性の性格』なんて検索しています。

しばらくして充電がなくなった彼は真っ暗になったスマホ画面を見せてきました。

知りません…。

 

 

 

 

話を遮るため、眠いから寝させて。話はまた後で。と言うと、彼は自身の肩をポンポン、と叩き私の目を見てきます。

嫌、いらない。と拒絶しても、彼はこのことを知らないでしょ、と切り返す。彼氏がいなければ俺の肩で寝れるのか?と聞いてくる。しつこい。

いいえっ!!!寝れません!!!!!!

 

 

 

見渡すと、後ろ側の席はガラガラでした。

路の途中にある警察の検問地点で一旦バスを降りた際に、私は最後にバスに乗り込み、後方の席に座りました。

彼は後ろを振り返って私の動向を見ていました。

 

 

 

やっと気が晴れた。あとは宿選びの際に彼を撒けば解決です。

1人で2シート使い広々、やっと景色を眺められます。窓の外の新疆の草原や乾いた地平を眺めながらうとうとしました。

次の休憩で彼は私と同じ列の通路を挟んだ隣に移ってきましたが私は一度もそちらを向きませんでした。

私はただ車窓にだけ顔を向け、写真を撮ったり眠くなったら寝たりしていました。

 

 

 

 

ウルムチからアルタイまではなんと12時間の長旅でした。

カラリとした空、白く赤い土、夜十時に暮れる太陽。

これまで甘粛で見ていたものとはまた違う、その躍動感ある景色を楽しみました。

 

 

 

 

 

 

次回に続きます。

 

 

 

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